数学の記号と記法 入門

高校数学を読み解くための記号・記法・略号の入門。実数や整数などの数の集合を表す記号、∈ や ⇒ といった集合・論理の記号、ギリシャ文字、Def. や cf. などの略号を、高校1年生でも読めるようにまとめました。

数学を学び始めると、教科書や参考書、このサイトの記事の中で見慣れない記号がたくさん出てきます。 etc…… これらは「難しそうに見せるための飾り」ではなく、長い日本語を短く正確に書くための便利な道具です。

この記事は高校1年生が最初に読む想定で、よく使う記号・記法・略号をまとめた「辞書」のようなページです。 すべてを暗記する必要はありません。「こういう記号があったな」と思い出して戻ってこられる場所として使ってください。

読み方のコツ

記号は外国語の単語と同じで、「読み(声に出すとどう言うか)」と「意味」をセットで覚えると一気に楽になります。 たとえば は「(〜に)属する」と読み、「要素である」という意味です。

数の集合

数学では、数を「仲間(集合)」ごとに分けて考えます。 よく使う数の集合は、黒板に書いたチョーク文字を真似た 黒板太字(blackboard bold) で表します。

記号読み意味
natural number自然数
integer整数(負の数や も含む)
rational number有理数(分数で表せる数)
real number実数(数直線上のすべての数)
complex number複素数( を含む数)

これらは内側ほど大きな仲間に含まれていて、

という関係になっています( は「含まれる」の記号。すぐ下で説明します)。

Note

は整数を表すドイツ語 Zahlen(数)、Quotient(商=割り算の答え)が由来です。 記号の出どころを知ると忘れにくくなります。

集合に関する記号

「集合」とは、ものの集まりのことです。集合を扱うときの基本記号をまとめます。

記号読み意味
属する は集合 の要素である
属さない の要素ではない
含まれる(部分集合) の一部
集合要素を波カッコで囲んで集合を表す
空集合要素を1つも持たない集合
和集合(ユニオン) または
共通部分(インターセクション) かつ

集合の書き方には2通りあります。

左は要素を全部並べる書き方、右は条件で表す書き方です。 右側の縦棒 は「〜であるような」と読み、英語の such that(〜を満たすような)にあたります。

論理に関する記号

数学の主張(命題)どうしのつながりを表す記号です。証明を読むときに必ず出てきます。

記号読み意味
ならば ならば
同値 は同じこと
かつ も成り立つ
または:少なくとも一方が成り立つ
すべての:どんな についても
ある/存在する:ある が存在して

たとえば「すべての実数 について が成り立つ」は、記号で

と書けます。日本語のひと続きの文が、こんなに短くなりました。

⇒ と ⇔ の違い

は一方通行( から は言えるが、逆は分からない)。 は両方向(行きも帰りも成り立つ)。 「逆も成り立つか?」を意識すると、数学の理解がぐっと深まります。

ギリシャ文字

アルファベットだけでは文字が足りないので、数学では ギリシャ文字もよく使います。 角度・比例定数・円周率など、登場場面はさまざまです。よく見るものを挙げます。

小文字読みよく使う場面
アルファ・ベータ・ガンマ角度、方程式の解
シータ角度(三角比でおなじみ)
パイ円周率
ラムダ比例定数、固有値
イプシロンとても小さい量
シグマ(大文字)和(合計)を表す記号

演算・関係の記号

計算や大小関係でよく使う記号です。

記号読み・意味
以下、以上
等しくない
ほぼ等しい(近似)
プラスマイナス(
平方根(ルート)
無限大
和(たくさんの数の合計)
階乗(

絶対値は数を縦棒ではさんで と書き、「 の絶対値」と読みます(数直線上の原点からの距離)。 関数は のように書き、「 から への対応」を と表します。

証明や文章でよく使う略号

数学の本やノートでは、ラテン語・英語由来の略号が頻繁に使われます。 知っているとノートを速く書けて、読むときも迷いません。

略号もとの語意味
Def.definition定義
Thm.theorem定理
Prop.proposition命題
Lem.lemma補題(定理を示すための準備)
Cor.corollary系(定理からすぐ導ける結果)
cf.confer〜と比べよ/あわせて参照
e.g.exempli gratiaたとえば
i.e.id estすなわち
s.t.such that〜を満たすような
Q.E.D. / quod erat demonstrandum証明終わり

文中で使う記号もあります。

記号読み意味
ゆえにだから(結論を導く)
なぜならば理由を述べる
Note

このサイトの数学記事でも、定義や定理の枠のラベルに Def. / Thm. / Prop. / Lem. / Cor. を、 補足の枠に ex.(例)/ Rem.(注意)/ cf.(参考) を使っています。 この記事で記号に慣れておけば、他の記事もぐっと読みやすくなります。

おわりに

記号や記法は、慣れるまでは外国語のように感じるかもしれません。 でも、ひとつひとつは「長い日本語を短く正確に言い換えるための略語」にすぎません。

最初から全部覚えようとせず、

  • 記事の中で出てきたらこのページに戻って確認する
  • 自分のノートでも、まずは1つか2つ真似して使ってみる

という形で、少しずつ自分の言葉にしていきましょう。 記号が読めるようになると、数学は「暗号の本」から「読める本」に変わります。